2018年1月6日土曜日

更科源蔵氏編の「アイヌ伝説集」が面白いべさ


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以前、中古本で手に入れた山田秀三氏著北海道の地名が非常に面白かったので、他にアイヌ民族と北海道に関する書籍は何か無いか、と探していたのだが、また面白そうな本を見つけた。

それがコレ。

更科源蔵氏編「アイヌ伝説集」

ネットの古本屋で見つけた、みやま書房発行の更科源蔵氏編「アイヌ伝説集」で、値段は1,400円だった。全10冊ある、「アイヌ関係著作集」シリーズの第1巻なのだが、読んでみたらこれがまあ面白い。


道南(渡島・桧山・胆振・日高地方)で144編、道央(支笏洞爺・石狩・空知・後志地方)で60編、道東(十勝・釧路根室・阿寒地方)で103編、道北(上川大雪・留萌宗谷・網走地方)で74編の伝説が収録されているのだが、神様やら怪物やら怪人やら野盗やらの話が数多く出てきて、読んでいて飽きることがない。

目次で面白そうな話を選んで読んでいるので、まだ全部の話に目を通した訳ではないのだが、面白かった話を以下に幾つか載せてみよう。





「鵡川の神沼」道南(胆振地方)P.57より一部引用。

鵡川の海岸にカムイ・ト(神沼)という沼があり、昔ここにサクソモイップという魔物が居たため、その魔物の悪臭で草木も生えず、人間がその風下を通りかかると身体が腫れたり髪が抜け落ちたりした、という話で、日高よりの海岸にその沼があるそうだから、一度現地を訪れてみたい。



「カッケンの狐神」道南(胆振地方)P.64より一部引用。

穂別町カッケン(栄下)部落が凶作に見舞われた時に、カッケン崖にいる狐の神様が若い男の姿をして食べ物をくれたので、部落の人間は餓死から免れた。ここは今、隧道が通っているが、その隧道の上の崖に立岩があり、それが若い男に姿を変えて現れた狐神だということだ。その隧道がどこにあるのかよくわからないのだが、いつか現地に行ってみたい場所だ。



「穂別川奥の神山」(日高地方)P.70より一部引用。

穂別川の水源にタプコプ(ポッコリ突き出た山)という嶮しく切り立った山があり、昔から神々が集まって遊ぶところだと言い伝えられている。こちらも地形図で場所を特定して、いつか行ってみたい場所の一つだ。



「伏古の腐敗沼」(十勝地方)P.184より一部引用。

帯広の伏古にカムイトー呼ばれる沼があるが、ここは元はチオマトー(腐敗した沼)と呼ばれており、大正5年に神社を建ててからカムイトー(神の沼)と呼ぶようになった。その沼の由来だが、昔日高染退アイヌと十勝アイヌとの間に婦女掠奪戦(すごい話ですな…)が起き、敗れた日高勢がこの沼にたどり着いたのだが、十勝勢に包囲されてしまったので、全員沼に飛び込んで溺死してしまった。その死体が腐り、それ以来この沼をチオマトー(腐敗した沼)と呼ぶ様になった、とのこと。ネットで検索すると「チョマトー(チョマテヨ!を連想するべさ)」という呼び方もあるようだが、ここは場所が分かったので、雪が消えたら是非行ってみたい。



「夕張奥の悪者部落」(空知地方)P.159より一部引用。

実にインパクトのあるタイトルだが、夕張の奥にこの世であらゆる悪いことをした、性質の悪い者ばかりを集めたトムンチ・コタンという部落があったらしい。現在住んでいる人にとってはエラい迷惑な言い伝えだべなと思うが、こちらもいつか行ってみたい場所だ。



「江別の意地悪爺」(石狩地方)P.150より一部引用。

こちらも中々のインパクトがあるタイトルだが、昔、千歳から江別付近に、よく人に難癖をつけては他人の物を掠め取るという、とんでもない爺さんがいたらしい。爺さんが居た詳しい地名はわからないのだが、伝説にまでなっていることから、相当な暴れ迷惑ジジイだったと思われる。



「人間の育たない土地」(十勝地方)P.190より一部引用。

音更川沿いに、オチリシという二つの山が向かい合った場所があり、神様が降りてくるところなので、本来は良い場所の筈が、良すぎて人間が住むのには向かず部落が作れない土地だった、ということだ。超強力なパワースポットということらしく、カタカムナ的に言うと「イヤシロチ」の様な場所なのかもしれない。場所を特定して、是非行ってみたい。





この様に、ざっと選んだだけでもこれだけの面白そうな話が載っている。

上記以外にも各地の「地獄穴」の話などまだまだ面白い話があって、それぞれ現地に行ってこの目で拝んでみたくなるのだが、この本に掲載されている話の土地を全て巡るのは、石器人が生きている間には無理かもしれない…。

この更科源蔵氏編の「アイヌ伝説集」については、これからも可能な限り掲載されている伝説について紹介したいと思っている。



(続く)  (前回)



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